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奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の
百人一首の中の一句ですね。下の句が「声聞く時ぞ秋は悲しき」
とかく秋は寂しくて、オスジカがメスを呼んでいるラッティングコールも寂しく聞こえるという意味でしょうか。
さて、当事者のオスジカの方の心境はいかがでしょうか。
これが寂しがっているような顔に見えますか?
私には必死な形相という風に見えます。
彼らには寂しがっている余裕なんてないんだと思います。
メスがいなければ探しにいく、邪魔するやつがいれば角をもって戦う。
もしこの季節を逃せば、来年まで待たなければいけません。
オスジカの寿命は長くてもせいぜい十数年。繁殖のチャンスが1年に1回だとすれば、秋がいかに貴重な時間だということが分かるでしょう。
そして冬を乗り切れる保証なんてどこにもなく、来年はこの世にいないかもしれない・・・。立ち止まっている暇はなく、自ら勝ち取りにいかなければならないのです。
先日、野生のエゾシカの交尾を撮影(盗撮?)するのに成功しました。
知床にエゾシカは多いですが、交尾している行動はなかなか見ることができません。
このオスは苦労が報われたようです。彼は求め行動したからチャンスを与えられたのですね。草食系だなんて呼ばせません。
食べること、寝ること、交尾すること。これらはその動物が存在し続けるために必要な行為です。
野生動物にとってのそれは命に直結することであり、私達人間とはたぶん重みが違うのだと思います。
(担当:ノセ)