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再び風に乗る
私はオオセグロカモメ。誇り高きカモメ族の中でも大型の種である。
先祖代々、知床半島に暮らしており、海と空を自由に飛び交ってきた。
先日、うっかりして車にぶつかってしまい、気が付いたら箱の中に閉じ込められていたのである。
なんたることか、いつも空から見下ろしてきた人間に捕まってしまうとは!
ぶつかった時に頭を痛めてしまい、体もうまく動かせない。
・・・どれだけ時間が経ったのだろうか。少し体が動くようになってきた。
すると人間たちが私を抑えつけ、小魚を口の中に押し込んできた。
やめろ!無理矢理口に入れるんじゃない・・・だが、まぁまぁ美味いチカだな。
しばらくすると私は箱ごとどこかへ運ばれていった。そろそろ覚悟を決める時か・・・
箱の蓋が開けられると、目の前には空と海が広がっていた。
人間は私を海岸に降ろして離れた。逃がしてくれるというのか?
海から風が吹いている。果たして私は再び飛べるだろうか?
何度か羽ばたいてみると翼は正常に動く。私は意を決して海に向かって飛び立った。
翼は風を捉え、私は再び空に舞い上がることができた。
やはり私の生きる場所はこの空と海だ。
ふと下を見るとさっきの人間が、なぜか嬉しそうに私を見ていた。
どういうつもりか分からないが、この場所に連れてきてくれたことには感謝しよう。
この地に生きる者なら、いずれまた会う機会もあろう。
(オオセグロカモメのJ)
先日、通報を受けて、車にぶつかって脳震盪を起こしたオオセグロカモメを保護しました。収容した時はほとんど意識がなく、体も正常に動かない状態でした。1日経つと意識が回復し、自力で立つこともできるようになったため、小魚を強制給餌しました。骨折などはなく元気に暴れるようになったので、海岸に連れていくと、正常に歩行し羽ばたき運動もできるまでに回復してました。カモメは飛べるかどうか少し迷っていたようですが、何度か羽ばたいて感覚を取り戻し、無事に飛び立っていきました。
傷病の野生動物が再び野生に戻れる時、ほっとした気分になります。ただこれからの海は荒れることが多いので心配です。
※弱った鳥は鳥インフルエンザの可能性もあるので、触れずに自然センターや博物館に連絡するようにしましょう。移動しなければならない時は使い捨てのビニール手袋や段ボール箱を使うといいでしょう。
(担当:ノセ)