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実のひとつだになきぞ悲しき
同じ夏は二度とありませんが、今年は特にいつもと違う夏です。
本州では西日本を中心に酷暑となっているとのこと、お見舞い申し上げます。
一方で北海道知床は西日本の方に申し訳ないくらいの、季節外れの寒さでした。
思い起こせば5月7日頃に季節外れの低温。6月9日頃にも低温。7月5日頃にも低温。
一月ごとに季節外れの低温が来ているような感じでした。
山を歩けば、この季節に実っているはずのオオヤマザクラの実が全然実っていませんでした。
オオヤマザクラの花期は5月上旬なので、ちょうど寒気と重なってしまい受粉できなかったのか、あるいは大風の影響で早熟のうちに落ちてしまったのか、ともかく実がついていないのです。
7月に実るオオヤマザクラの実は、ヒグマにとって重要な食べ物の一つです。それが今年はダメでした。ヒグマたちは少しでも飢えを満たすため、アリを食べに道路に出てきています。彼らが道路沿いに出没し、車や人が近くに集まっても逃げないのは、それだけ切迫しているからなのです。
昔の和歌をもじってみると今のヒグマの心境は、「七重八重 花は咲けども山桜 実のひとつだになきぞ悲しき」といったところでしょうか。(元ネタは兼明親王の山吹の和歌です)
今のヒグマの頼みの綱は8月に河川に遡上するカラフトマスですが、これも気象に左右されます。
野生動物の暮らしはいつも不安定で、自然の気まぐれによって太ったり痩せたり、ひどければ餓死したりもします。時に苦しむ野生動物を見るのはとても辛いことですが、私達にできることは彼らの生活を尊重し見守ることです。
(担当:ノセ)