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うつせみ

動物

先日までエゾハルゼミが鳴いていたと思っていたら、いつの間にかコエゾゼミに代わっていました。季節の移ろいは早いものです。

コエゾゼミはカメムシ目セミ科の昆虫で、北海道だけでなく本州の標高の高い地域にも生息しています。エゾハルゼミより大型で、鳴き声も「ジーーー」という単調な音です。

しかしこの音を聞かないと夏が来た感じがしません。

林の中を見てみると、抜け殻や脱皮中のコエゾセミがいました。脱皮したてのコエゾゼミは薄い緑色ですが、乾燥すると茶色系の色に変化します。

毎年のことですがセミの脱皮を見ると、季節と生き物の繋がりを実感します。コエゾゼミの幼虫は地中で樹木の根から養分を吸い、ゆっくりと成長します。幼虫の段階でヒグマやタヌキに掘られて食べられてしまうこともあれば、脱皮中にキツネやカラスに食べられてしまうこともあります。

無事に羽化し、卵を木の枝に産み付ければやがて死んでしまいます。幼虫の期間に比べれば成虫の期間は切ないほど短いです。卵からかえった幼虫は地面に潜り、親と同じように地中でゆっくりと成長します。セミは太古からずっとこうして命をつないできたのでしょう。

日本ではセミの抜け殻のことを空蝉(うつせみ)と呼びますが、広辞苑によれば「空蝉」は当て字で、元々はこの世に現存している人間を表す言葉「現人(うつせみ)」だったそうです。

生きている人間とセミの抜け殻は同じものではありませんが、「うつせみ」という言葉で繋がっています。何やら不思議な縁を感じますね。

(担当:ノセ)