STAFF BLOG
相変わらず虫の話です。
知床連山もすっかり雪化粧をまとい、季節は着々と冬へと向かっていることを実感しております。
皆さまは蝶をはじめ虫たちがどうやって冬を越すのか考えたことはありますでしょうか。
たまたま先日、センター周辺やウトロ市内でお天気の良い日を狙って花を探し飛び回る「クジャクチョウ」を見かけたので、蝶について散策がもっと楽しくなるお話ができればと思います!
(イモムシが出てくるので苦手な方は気を付けてくださいね)
こちらはウトロ市内で見かけたクジャクチョウという、タテハチョウ科に分類される蝶です。
本州では標高の高い山でしか見ることができないのですが、北海道では身近でよく見かけることのできる蝶です。
翅を広げた大きさは5センチほどとそこまで大きい蝶ではないのですが、鮮やかな朱色と4つの眼状紋がよく目立ち、思わず目を惹きます。
以前書いたブログでも眼状紋について少し触れましたが、クジャクチョウのこの派手な眼状紋も天敵から身を守るための効果があると言われています。
クジャクチョウは年2化(1年のうち2回羽化をすること。クジャクチョウは夏7月頃と秋9月頃)をし、ちょうど今は9月生まれのまさにこれから越冬するぞ!という成虫を見ることができます。
ちなみに…ヨーロッパから中央アジア、日本、ユーラシア大陸と広く分布をし、その中でいくつかの亜種に分かれていて、日本にいるクジャクチョウの亜種は「Inachis io geisha」と学名がついています。亜種名の”geisha”は艶やかな着物を纏った芸者に喩えたことからついているそうな。
そして学名の"io(イオ)"はギリシャ神話に由来します。ゼウスの妻ヘラに仕えた美女の名前で、全知全能のゼウスを魅了するほどの美女だったイオはヘラの怒りに触れてしまい、辛く悲しい運命に見舞われたイオの涙からクジャクチョウは生まれたと伝えられています。(諸説あり)
こんなに魅惑的で美しい学名と姿を持った蝶は他にいないのではないかと、個人的には思います。
思いますが。
幼虫時代は真っ黒でトゲトゲもついていて、どこでどうなってこの翅の色と模様になるのか、本当に不思議でたまりません。
蝶は完全変態の生き物。まさに華麗に変身ですね。
ハナアブの仲間だと思いますが、クジャクチョウが吸蜜中にここぞとばかりに占領を始めました。
花の開花が徐々に終わっていくこの時期、咲いている花があれば虫たちも食事に必死です。
仲良くして~。
気になる越冬方法ですが、ザ・シンプル。
家屋のすき間や廃屋の中、枯れ葉や枯れ草の間などでジッと動かず長い冬を耐え凌ぎます。
自然センター周辺ですと、開拓小屋コースにある開拓家屋や開拓小屋が心地の良い越冬場所になっているので、春に散策すると越冬明けのクジャクチョウとご対面できると思います。
そして、春の日差しを受けてまた活動を再開。交尾・産卵をして子孫を残し、その役目を終えることになります。
このクジャクチョウは今年の春5月頃に開拓小屋コースにて見つけた越冬明けのクジャクチョウですが、先日見かけたクジャクチョウと比べると、翅もボロボロで鱗粉も取れているのがわかります。
成虫で越冬をする蝶はクジャクチョウの他にも、以前、森づくりスタッフ・くさっちがブログで書いていたキベリタテハやルリタテハなどもいますが、センター周辺や散策路で見る機会が多いのはクジャクチョウかもしれません。
ん~、卵、幼虫、蛹で越冬と、どの越冬方法でもこの知床の冬を越せることがすごい思いますが、成虫の状態で飲まず食わずで半年間…(蝶だと飲まず、だけですかね)
クジャクチョウ、なかなかの逞しさとそして美しさを兼ね備えた魅力的な蝶であることには変わりありません!
全ての蝶が越冬に成功するわけではありませんが、多くの蝶が無事に冬を越せるといいですね。
(ぽん)