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交じるレアキャラたち
流氷たちも姿を消し、知床の厳しい気候が少し和らぐこの時期。
斜里の農地には、たくさんのガン類が飛来します。
雪が解け、地面が見え始めたころにやってくるため、個人的には春の訪れを感じさせてくれる鳥たちです。
このガン達は、本州の一部地域では越冬する冬鳥ですが、北海道では春と秋に観察される旅鳥です。
斜里でよく観察されるガン類はオオヒシクイやマガンですが、稀にそれらの群れに他のガン類が交っていることがあります。
(昨年はハクガンが混じっていたり、一昨年はオオヒシクイの白化型とおもわれる白いオオヒシクイが交っていたり、、、)
そのため、「あぁ、ヒシクイの群れか」、と思いつつも珍しいガン類が交っていないかをついつい確認してしまいます。
とある休日、いつものように大量に秋蒔き小麦の若葉をついばむガン類の群れを発見しました。
ガン類はとても警戒心が強いため、離れた位置に車をとめ、車内から窓も開けずに観察を開始。
「オオヒシクイが大多数だがマガンも相当いるな。んーオオヒシクイとマガンだけか、、、」
すると、新たな群れがやってきました。
「またオオヒシクイとマガンかな、、、ん、んん?んんんん!?」
オオヒシクイの群れに交じってやってきたのは、4羽のシジュウカラガンでした。
シジュウカラガンとは、一度は絶滅したとされていた鳥で、再発見されて以降、日本・アメリカ・ロシア共同の保護活動で個体数が回復、現在のIUCNのレッドリストではLC(least concern)として絶滅の可能性は低い、低懸念種となりました。しかし、環境省のレッドリスト(2020)ではいまだ絶滅危惧種IA類(CR)「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの」に指定されている絶滅危惧種です。
思ってもいなかったレアキャラに心躍らせ、さらなるレアキャラを求めて一羽一羽確認していると、
「オオヒシクイ、オオヒシクイ、マガン、オオヒシクイ、オオヒシクイ、ん、んん?んんん!?」
数百羽もの群れにたった一羽。一羽だけ交じっていたのは、サカツラガンでした。
サカツラガンとは、このように他のガン類の群れに一羽~数羽で交じって渡来する稀な冬鳥です。
顔周りの色味が酒に酔った顔の様に見えるため、漢字では酒面雁と書きます。(少しかわいそうだな)
主な越冬地などがないため、なかなか見られず、私も初めて観察することができました。
ちなみに、「あぁ、オオヒシクイか」「あぁ、マガンか」とまるで雑魚キャラ(レアキャラの対照として)かのように話してしまっているヒシクイやマガンですが、実は彼らも天然記念物で、絶滅危惧種です。
斜里ではまるで一般種のように観察できますが、彼らも場所によってはレアキャラなのです。
ぜひ皆さんも群れを見つけたら、一羽一羽よーく観察してみてください。
もしかしたら、思ってもみないレアキャラが交っているかも?
上述の通り、彼らはとても警戒心が強いため、驚かさないように遠くから静かに観察してあげてくださいね。
(個人的にはこんなにも大群についばまれている秋蒔き小麦の若葉たちの被害はどのくらいなのだろうかと気になっています)
(担当:In)